両立は簡単ではない
精神的な問題
介護職は日常生活を送るのが困難な方をサポートする仕事です。育児中のお母さん介護士の場合、職場では利用者の体調管理や食事、排せつなどの介助を行い、自宅に戻ってからは子どもの面倒を見ることになります。そのため、一日中「人の身の回りのお世話をする」ことになります。その点にストレスを感じ、両立を諦める方が少なくありません。
また、利用者のほとんどは高齢者です。怪我や病気の治療のように「回復していく」のではなく、利用者は徐々に「できることが少なくなっていく」状態であることが多いです。今まで問題なく会話ができていた方も、時間が経つにつれて意思疎通が難しくなっていきます。家に帰って元気な子どもと接することで上手にバランスを保っているお母さん介護士もいますが、徐々に死へ向かっていく利用者の姿を見続けることに精神的なストレスを感じてしまう方も多いのです。
体力やライフスタイルの問題
利用者の介護度は職場によって異なりますが、寝たきりの方の入浴介助や車いすへの移乗介助など、体力を必要とするものがあります。それらの業務は身体的な負担が大きく、特に足腰にダメージがきます。そのため、慢性的な腰痛を持つ介護士の方も少なくありません。一方で、子育ても子どもの抱っこや入浴などで体力を必要とします。体力的な限界を感じ、両立を断念するケースがあります。
近年の傾向で言えば、子育て世代は30代から40代が中心です。体力が落ちてくる時期ですが、介護職と育児はどちらも強い精神力と体力を必要とします。また、40代になると自身の親の介護が必要になる場合もあります。介護士の仕事、育児、親の介護を全てこなすのは非常に大変です。そこで致し方なく仕事を諦める方や、復職をためらう方がいるのは無理もありません。
労働環境の問題
24時間体制で運営している介護施設の場合、夜勤が発生します。介護業界全体が人手不足ということもあり、どこの介護施設でも人手不足の状況です。そのため、休日が少なくなってしまう傾向があります。しかし、小さい子どものいるお母さんにとって夜勤は非常につらいものです。労働基準法に定められている夜勤免除制度を利用することもできますが、そうすると業務が回らなくなりますし、そもそも人手が足りない状況で制度の利用を打診するのは勇気がいります。最近は、労働環境を改善するために施設内保育所を設けているところがあるので、育児との両立を目指すお母さん介護士は育児支援制度が整った職場で働くことをおすすめします。
家庭環境に合った働き方を見つけよう
子どもがある程度大きくなり、手間がかからないようになったのであれば、今後の教育費などを考えて収入が安定している正社員を目指すのもいいでしょう。まだ子どもが小さいうちは、育児の時間を確保するためにパート勤務がおすすめです。また、残業や面倒な人間関係を避けたい人は派遣社員がおすすめです。